共産党の検挙が、次々に行われるのはいいが、その発生を予防する政治的社会的施設が少しも行われないのはどういうわけであろうか。現代の社会を生活難、就職難、失業難の過中に置いて、不穏思想の温床たらしめて、そこから発生するものだけを刈り取ろうとするのは、はなはだ聞えない話であると思う。
三月の卒業期が来るたびに、自分は憂鬱になる、数千に余る私立大学の卒業生など、一体どこで職業にありつこうというのであろうかと。中学を出ただけでは何にもならないし、といって大学を出ても何にもならないし、何にもやる仕事がないために、つい左翼運動などに生き甲斐を見つけるのであろうと。昨年検拳された人々の中でも、ちゃんと職業があったならば、ああした運動にはいらなかったであろう人を、自分は二、三人知っている。
河上博士や大塚教授など、マルクス学者が、実行運動に引き込まれて行くのは、仕方のないことであろうと思う。
これは私事だが、アメリカにいる弓削亀之助(?)とかいう人からときどき物をくれる。小学校時代の旧友であるとのことであるが、宿所が分からない。今度も山陽丸の司厨長を介してオレンジをたくさん貰った。先年は煙草をたくさん貰ったし、アメリカのメロンをたくさん貰った。メロンは初めて見るメロンなので、台所に放りぱなしにしてあったところ、当時帰朝した吉屋信子さんが「これはアメリカのとても貴重なメロンです」といって、たった一つ持って来られたメロンが同じメロンだったので、初めて台所に放りぱなしに置いてあったメロンが、いかに高価なものであるかを知って驚いたのである。宿所が分からないためここでお礼をいっておく。
(八年三月)
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