プロデューサー・インタビュー/江並直美 デジタローグ



Q:江並さんの場合、いわゆるマルチメディア一般的なものを必ずしもビジネス展開として捉えられているわけではないようですので、デジタル・メディアが今後どうなるか?みたいな話題には、必ずしもご関心はないかもしれませんが、とりあえずこれまでの色々なアーティストの作品集をCD-ROMとして作られ、またそれが評価されてきたという流れを受けて、今後はこういうタイトルを作っていきたいという展望のようなものがあれば?

 僕もね、最初の段階ではビジネスということはあまり考えていなかったのですが、結果としてビジネスの流れに巻き込まれてますので、いわゆる商売なるものをどうしてもやらざるを得ない状況にはなってます。でもどうせやるとしても、やっぱりうちの場合はちょっと違ったやり方になりますよね。だから「表現」と「商売」と言って分けてしまうけれど、「表現」するという一般的にホーリーだと思われている部分と、「商売」というちょっとナマっぽい感触がするものとを、単純に切り分けてしまうのはおかしいんじゃないかと思いますね。だから、別に表現者が商売しても意識は曇らないはずなんです。そんなもので曇るようじゃ、強度がない、弱いんじゃないの?って思うわけですよ。

 もちろんすごく弱くて、繊細な表現というのも時々ありますけど、そういう作家にしても、その良さを壊さないようにして一枚皮を剥きますよ。僕はビジネスという部分に関しても真剣にやってますからね。何だかんだいって年間10タイトルとか出すわけだから、これはもうビジネスじゃないと絶対できません。その部分でいえば、かなり僕なりのやり方でやってます。それは流通とのネゴシエーションもあるし、海外とのネゴシエーションもある。だけど、それはみんなやってることだからね。

 ただね、業界全体の話となると難しいですよね。デジタローグは今年で5周年なんですが、ちょうど何もないところから始まって、マルチメディアブームといわれる時代があったりして、ようやく原点に戻ってきた5年間という印象がするわけですよ。この業界の人たちと色々知り合って、話もして、一時はそれが新鮮なこともあったけど、結論としては、昔から思ってた印象は変わらなかったですね。でも交流関係が広がったのは良かった。やっぱり自分の考えとは違う、いろんな考え方があるなぁ、と。するとますます独自の道を行く決意が固まるわけです(笑)。

 で、これから今後、どういうモノを作っていくかという話では、具体的な部分では色々なことをやってるわけですが、大きな意味あいで言えば、先ほどお話したように、感動できるようなタイトルを作っていかなくてはいけないだろうというのがひとつあります。すごく新しいメディアなのに、みんなろくでもない、デザイン的にもと映像的にも変にこじんまりとまとまらせている。そういうものには興味がわかないですよ。歴史的にみて、写真が150年、映画100年ぐらいですよね。絵画には数百年という歴史があるじゃないですか。日本における戦後デザインにしたって50年以上の歴史がある。テレビでもやっぱり40数年くらいあるわけだから、そういったものと、メディアの歴史として5年余りしかないものを比較して、新しいメディアとして素晴らしい表現をもっともっと出せる環境を作っていかないといけないと思います。

 だから、ふと周りを見渡して、みんなようやく色々言い出しているでしょう。アーティストがどうとかデザインがこうとか……「わかってんのか、お前ら?」って感じがありますよね。なぜなら僕らにすれば「そんなもの作って、みなさん儲かると思ってるのですか?」というのがあるわけですよ。でも、いっぱいタイトルが出てくるのはいいことなんだけど、難しいのは、例えばある優れた内容があったとして、それをあまり良くない編集、良くないインターフェースで出してしまったら……しばらく出せなくなってしまうでしょう。それはもったいないですよ。画面でモノを見せるためには、やっぱり僕らはインターフェース・デザインということに非常にこだわって作ります。もちろんそれがアーティストの人気の秘密なのかもしれませんけど。それはなぜかというと、誰もやってないことをうちは実験してるんです。ただし実験で終わらせない。すべては実用と実験だからね。

 うちはデザイン会社ですから、プレゼンテーションとかさんざんやらされたわけですよ。すると需要がなかったら仕事にならないわけ。それでお声がかかると「あ、仕事がきた!」ってことで忙しくなって「俺が、俺が」って出ていくわけだけど、いざ作業が始まると、相手が最初の話と違うことを言いだしたりして、もう嫌で嫌で面倒くさいんですよ。それでもそれを受注しないといけないわけだし。今でこそアシスタントがいっぱいいますから、そいつらにみんなやらせるわけですが、昔はそういうのを全部ひとりでやってたわけ(笑)。だから今はプレゼンテーションもしたくない、自分で判断してものを作りたい。そのほうが早いんです。

 例えば、こういうふうにしたらわかりにくいっていう意見が途中で出たとしても、もうこれでいって一度決めたらそれで作っちゃうわけです。もちろんそれは、自分の中で悩んだ上「これでいいのだ」って言ってるわけですから。そういうふうにしてできたものを見た人が、いろんな意見があるほうが面白いと思ってるから。そんなに全員が全員、気に入るようなモノなんか、絶対できないですよ。だから余計に「俺が俺が」で作った方がいいなっていう思いがあるわけです。



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