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人類の進歩と調和(?)

古瀬幸広の「off side 2001」 第23号
2001年9月14日

ちょうどこの原稿を書き始めたときに、America Under Attackが始まったせいで、ぱたっと筆が止まってしまった。もう締切の金曜日だが、なかなか難しい。これほどの悲劇を相手にしては、冷静に「批評する」ということはとてもできない。ただひたすら、犠牲者とその家族、なんらかの形で被害を受けた方々に対し、心からお悔やみを申し上げるのみである。

相対的に見る、ということ

というわけで、とりとめもなく、感想を書いていくことにする。

それにしても、なんと計画的な犯行だろうかと震撼してしまう出来事であった。ハイジャックできた時点で、すくなくとも1機の成功は約束されていたからである。いくら低空飛行を重ねたとしても、それだけで民間人が多数乗る飛行機を撃ち落とすのは無理だ。意図がはっきりするまで、手は出せない。そしてその意図は、ビルに彼らが突っ込むまでわからなかったのである。

民間人を多数巻き込んだ、という点において、今回のテロ行為(戦争行為)は本当に忌むべき、憎むべき行為であると思う。ただ「未曾有の出来事」であると言われると、首をかしげてしまう。中東に行くと、民間人を巻き込んだ「暴力」は日常茶飯事だ。その昔、ベイルートは「中東のパリ」といわれ、とても美しい街だった。

いや、市民を多数巻き込む原爆を、ヒロシマとナガサキに落としたのはどこの国だったか。ビル2棟どころではない。町がまるごと吹き飛んでしまう経験を私たちはしている。CNNやBBCをチェックしていると、「パールハーバー以来」という言い方をアナウンサーがしていたが、本当にそうなのだろうか。「不意打ちされた」という共通項を見つけてそう表現しているのだろうが、「都市の市民が多数犠牲にされる攻撃」という点に着目すれば、「原爆以来」と言ってもいいはずなのである。

「狂信的」で片づける思考停止

クルマの中でNHKニュースを聞いていたら、中東に駐在していたこともあるという解説委員が出てきて、タリバンをはじめとするイスラム原理主義者について解説していた。しばらく聞き入っていたのだが、ひどいものだった。噴飯もの、といっていい。

人間は、つい自分たちの価値観だけで判断し、それが通用しない相手のことは「狂信的」といって片づけてしまう。この解説委員が言っていたことは、つまり彼らは狂信的であり、文明の敵だ、ということである。テロを繰り返してきたIRAもそうなのだろうか。神風特攻隊として飛び立っていた多数の若者たちもそうだったのだろうか。なんの解説にもなっていなかった。イスラムへの偏見を助長しただけ、である。

テロ行為に対しては、断固として武力行使をするというのがアメリカ的考え方であるから、これから間違いなく、軍事行動が始まるだろう。しかし、「狂信的な人間たち」を殺しにいく、というのでは、セントバーテルミーの大虐殺と変わらないではないか。つまり私たちはなにも進歩していない、ということなのである。彼らがアメリカに対して、ここまでの攻撃を行う原因はなにか、ということを、「狂信的」という言葉を使わずに説明してもらいたい、と思うのである。

余談

感心したのはwww.cnn.comで、事件発生直後から、きっとアクセスが殺到したろうに、かなり軽快にトラフィックを裁いていた。当日はトップページをすっきりとした作りにし、広告類も排除し、ページそのものを軽くしていたことにも感心した。

それに比べると、スマートではなかったのがwww.asahi.comで、いつも通りの宣伝だらけのページを出しており、そのせいで重く、なかなかニュースが出てこない。まだまだ使いこなせていないな、という印象が強い。
もうひとつ感心したのは、松江万里子氏のレポートである(http://www.honya.co.jp/contents/mmatsue/)。欧米での報道ぶりを伝えてくれているのだが、文化を相対的に見ることのできる人らしく、冷静な中にも「なるほど」と思わせる指摘が交じっており、じつに読みごたえがある。CNNの主張を一歩も出ることのない日本のマスコミ報道を見るくらいなら、松江氏のレポートをじっくり読むことをお勧めしたい。

(off side 2001, No.23. 了)


[奥付]

古瀬幸広の「off side 2001」第23号
2001年9月14日発行(毎週金曜日発行)
著者  古瀬幸広 <http://www.kk.iij4u.or.jp/~furuse/profile.html>
発行人 廣瀬克哉 <hirose@honya.co.jp>

Copyright (c) 2001 by FURUSE, Yukihiro. All Rights Reserved.

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