山森茶館

「契爺」とは広東語でゴッドファーザーの意。香港お嬢たちから親しみを込めて契爺と呼ばれるAsiatic Exproler 山森洋一さんが、アジアの各地で遭遇した旅の場面を伝えるフォトエッセイ「契爺茶館」。アジアのさまざまな風景を毎月お届けします。

2000年1月

ローテク橋を渡ってみたら

<写真:山森洋一 撮影:1999年3月20日午後3時ごろ。インドネシアにて>

ローテク橋を渡ってみたら

インドネシア西ジャワ州のクンデン山地に住むバドゥイ族は、先祖から語り継がれてきた慣習法で、一切の現代文明、工業製品を生活に取り入れることを忌避している。

このチウジュン川は山中でもっとも大きな水系で、その両岸にも幾つかの集落が点在している。集落の間は鬱蒼たる森を貫く細いそま道でつながる。川は流れがかなり早く、川幅も20 メートルはあるし川岸に降りられるところはほとんどないから、この辺の人びとにとってこの吊り橋は大事である。

荷物があったら人が途中ですれ違うことができない幅である。常に一方通行だ。たまさか両側に人が滞留したとしても、たちまち世間話に花が咲くから、いらいらすることもない。深い山の中なので集落にはとくに広場といったものはなく、この吊り橋が ほとんど唯一の公共建造物と言ってもよさそうだ。それだけに村々を往き交う人々や、マンディ(水浴び)する人たちがよく集まってくる。

吊り橋は通常 1 年はもつが、豪雨で流されることもしばしばだ。架け直しや修繕作業は橋を利用する集落から人が出てだいたい一日で完成するという。この橋ももちろん金属などいっさい使わず、木の蔓を利用し通路を竹で組みあげ、釘などもまったく使わない。バドゥイ族の住む山岳地帯には130ほどの水系があって、実はこの橋がもっとも立派なものだ。たいていは丸太を一本架けただけで、山歩きのブーツで渡るのは勇気がいる。ローテク技術を享受するには、一定の身体能力が要求されるのだ。


バドゥイの人々については、山森さんのレポート「ジャワ原人からの伝言」にて詳しく紹介されています(編集部)。


(c)1999 Yoichi Yamamori

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