「契爺」とは広東語でゴッドファーザーの意。香港お嬢たちから親しみを込めて契爺と呼ばれるAsiatic Exproler 山森洋一さんが、アジアの各地で遭遇した旅の場面を伝えるフォトエッセイ「契爺茶館」。アジアのさまざまな風景を毎月お届けします。
2000年2月
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<写真:山森洋一 撮影:1996 年 11 月 29 日午前 ガンジス河の沐浴場・バラナシーにて>
インドでは太古の昔から水や河川が人びとの信仰の対象とされてきた。なかでも最も神聖視されたのがガンジス河だ。
女神ガンガーはヒマラヤの娘として天界で育ち、天上界を流れるこの聖なる河で罪を清め自らを浄化する力を地上の人間にもたらした、という神話はいまも流域の各地で語り継がれる。 ヒマラヤ山中を源とし、途中様々な支流を集めて北インドを横断してベンガル湾にそそぐガンジス河は、ヒンドゥスタン平原に豊穣をもたらし、何億もの民を養ってきた。この河が『母なるガンガー』と崇められている所以である。
ガンジス河流域のうちでも、ここバラナシーはインド人にとって極めつきの聖地といっていい。
右岸には60もの沐浴場(ガート)が連なり、夜明け前から人びとが集まる。年に100万人以上の巡礼者がインド中から訪れるのだ。ヒンドゥー教徒にとっての最高の歓びはガンガーで沐浴し祈ることであり、ひいてはガンガー河畔で死を迎え、荼毘に付されて骨や灰を聖なる河に流してもらうことだという。
ヒンドゥー教徒のひそみに倣い、私も沐浴することにした。この時期の北インドは夜は冷え込むほどで、日中でも20℃前後、かのガンジス河の水は生温かった。深みまで泳いでしばし瞑想ののち真鍮製の壷に水を満たして岸に帰った。後日知人から聞いた話だが、その女性もここで沐浴し大腸菌やら得体の知れない細菌に侵され2ヵ月も入院を余儀なくされたそうだ。くわばら、くわばら。
(c)2000 Yoichi Yamamori