契爺茶館

「契爺」とは広東語でゴッドファーザーの意。香港お嬢たちから親しみを込めて契爺と呼ばれるAsiatic Exproler 山森洋一さんが、アジアの各地で遭遇した旅の場面 を伝えるフォトエッセイ「契爺茶館」。アジアのさまざまな風景を毎月お届けします。

2000年5月

朝一番の結婚披露宴!

バドゥイ族の結婚披露宴の様子

披露宴:奥の長老から許しがあった

写真:山森洋一 撮影:1998年8月24日午前8時撮影(下の写真も)

インドネシア西ジャワ州の山岳地帯は、少数民族バドゥイ族の地だ。カネケス村と呼 ばれるが、そのほぼ中央にあるチピイト集落の民家に泊めてもらった翌朝のこと。周りに何となくざわめいた雰囲気が漂っていた。すぐ向かいの家で結婚披露宴が始まろ うとしていたのだった。時計を見ると8時ちょうど。一座の長老に飛び入りをお願いしてみたところ、ほんの少しならと許しを得てお祝いに列席することができた。本来 なら外国人を忌避する社会なので、とくにこうした神聖な空間への侵入はご法度なはずだが、何度か通って顔見知りも多いので、まあ仕方あるまいという仕儀になったの であろう。

新郎新婦披露宴は新郎新婦の縁者や主だった長老が、新しい門出の安寧を神に祈り、皆で食事をする。結婚と一年のうち最大のお祭り(カワルー)以外は食べることのない鶏肉も 料理され、大量のご飯とソルト・フイッシュ(塩漬けの魚)が振舞われる。お祈りの儀式が済んだあとは、といっても儀式には同席することは適わなかったのだが、世間 話や噂話に場が弾む。たまたまこのカップルはお互いに連れ合いを亡くした再婚であったので、比較的シンプルな披露宴だったようだ。結婚の儀式は慣習法(アダッ ト)に厳密に従うものなので、初婚同士であったら許されることはなかったはずだ。

食事が終わると、参席者は一同うち揃って、チチャカル・ギランという集落に行き、 アミル・カミルと呼ばれる称号を持つ長老を訪ねる。そこで報告し改めて祈祷してもらうのである。この長老は年齢不詳だが、カネケス村でただ一人の結婚仲介人の地位 にある。バドゥイ族は慣習法を死守する内バドゥイとやや緩やかな外バドゥイに分かれ、住む地域も異なるが、こと結婚の儀式だけはこの人が仕切ることになっている。 絶対に写真を撮らせないので紹介できないのが残念だが、最も尊敬されている長老の一人だ。写真にあるバナナや笹の葉で包んだものは、長老アミル・カミルとともに祝う披露宴の二次会(?)のための、いわば仕出弁当なのだ。

朝一番といっても、この人たちの生活は午前4時から農作業、午後6時には床に就く ので、苦にはならない時間帯である。披露宴は一時間ほど続き、やがて新郎新婦を先頭に一同チチャカル・ギランに列をなして向かったが、そこまでの同行は峻拒された のだった。


(c)2000 Yoichi Yamamori

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