契爺茶館

「契爺」とは広東語でゴッドファーザーの意。香港お嬢たちから親しみを込めて契爺と呼ばれるAsiatic Exproler 山森洋一さんが、アジアの各地で遭遇した旅の場面 を伝えるフォトエッセイ「契爺茶館」。アジアのさまざまな風景を毎月お届けします。

2001年1月

ウズベキスタン‐ウルゲンチの市場で


 ヒヴァを訪ねるのが目的だったが、96年当時は外国人制限地域で近くのウルゲンチ(国内線空港もここにある)に投宿した。この町は比較的新しく元々は200kmほど南のトルクメニスタン側にあった。人口2万5千の地方都市だが、真冬の2月だったこともあり、おそろしくだだっ広い道路に行き交う人は少ないが、誰もが「サローム」と声をかけてくる人懐っこさがある。目が合えばとりあえずロシア語でヤポンスキー?と聞き、あれこれ質問の矢を繰り出してくる。閉口したのはブルース・リーの映画を見た、すごいね、というのが必ず登場することだった。どの都市にもあるグム百貨店のテレビ売り場は黒山の人だかりで、ふとテレビ放送が始まったころの新橋駅前の街頭風景が頭によぎる。一方でレンタル・ビデオ屋さんも見かけたから、ドラゴンもずいぶんと人気があるに違いない。

 さて、唯一の劇場もこの時期は閉鎖なので、近くのバザールに出かけることにした。

 バザ−ルはかなり広く、屋根のついたストールが延々と並ぶ。周りの露天にも商品が溢れているが、食料品をはじめ、衣類その他の日用雑貨品が主である。とくに目につくのが蜂蜜のボトル。このあたりをホラズム(太陽の国)地方というが、年間300日以上晴天が続き強烈な陽光のもと、カラクム砂漠とキジルクム砂漠やステップの土地で採れる蜂蜜は特産品で滅法味がよいのだという。広口ビンを2本買って外気で凍らせて東京に持ち帰ったが、さらりとした甘さでなかなかの評判だった。確か一本150 Som(約200円=当時)とメモに記してあったが、漏れないように包装する材料に難儀した記憶がある。


砂漠産の蜂蜜売り場
1996年2月14日4時頃

 夕暮れ時で店じまい寸前のソーセージ売りの兄ちゃんが声をかけてきた。

「俺んとこのソーセージは旨いぜぇ」
「試していいか」
「はいよ」

 売り物から一本掴むや真っ二つに切って厚いのをよこしてくれた。試食用に切り分けたのは見当たらなかったところを見ると、土地の人は見ただけで分かるのだろう。残ったのはどうするのだろう。私はソーセージには目がない方だが、これはとてつもなく旨かった。太いのを2本買って旅行の間中ナンと一緒に楽しんだのだった。中央アジアの食文化の一つは羊肉だが、食材として実に多様な使い方をする。このソ−セージもそうだったし、屋台で食べるシャシリク(いわゆるシシカバブ)の、とくに新鮮な羊のレバーはかのフォアグラに勝るとも劣らない。ぜひお試しあれ。


ソーセージ売りの兄ちゃんと仲間
1996年2月14日5時頃


(c)2001 Yoichi Yamamori

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